はじめに
AROUND60 FITNESS(ロクマルフィット)をご覧いただきありがとうございます! 筋トレ歴10年の副業ライターあんじょうです。
パリオリンピックも閉幕しました。今大会は海外開催(つまり東京オリンピックを除く)の大会ではメダルの数が最多だったそうです。選手の皆さんは素晴らしい成果と感動を残してくださいました。
さて、オリンピックに限らず、競技時間の長いスポーツを観戦していると選手がインターバルでゼリー状の飲料を飲んでいるのを目にすることがあります。
あのゼリーの中身は糖質(デキストリン)とアミノ酸が主な成分で、効率よく体内にエネルギーや栄養素を補充するためのものです。
そして、あのような便利なものができるまでは、どうしていたかと申しますと…本日ご紹介する「バナナ」や「蜂蜜付けのレモン」を食べていました。これはあんじょうと同世代の方ならご存知かもしれません。
「昭和」に青春時代を過ごした世代の話ですね…
令和の現在から昭和を振り返ると、体育会系のクラブ活動では「兎跳び」や「走り込み」など合理的でない(危険な)ことをしていたと思うことも多いのですが、そんな慣行の中に「試合前にバナナを食べる」というのがありました。
筋トレに各種サプリメントが多用される現代においても、「バナナ」はまだまだ現役です。
インターネットを検索すると「バナナは筋トレに最適!」といった記事をよく目にします。確かにバナナは優れた食材なのですが、記事の中には首を傾げたくなるような記述もちらほらあります。
そこで、本日は「筋トレ飯」としてのバナナについて、話を盛らずに「本当のところ」をご紹介して参りたいと思います。
この記事の骨子は以下のとおりです。
- バナナには糖質を中心にスポーツに効果的な栄養素が多く含まれる。
- とはいえ、世間一般の情報は少々「盛りすぎ」な気がする。データから冷静に考えてみると、バナナのメリットはこれ。
- バナナを食べるなら、筋トレ前?筋トレ後? あんじょうのおすすめは、「前」。
では、参りましょう。
バナナは本当に「筋トレ飯」として優れているのか?
筋トレ(身体づくり)に必要な栄養素は?
筋トレの目的が筋肉を増強(肥大)させることであれば、必然的に筋肉の材料となるタンパク質(アミノ酸)は必須となります。また、激しい運動(筋トレ)を最後までやりとげるためのエネルギー源として糖質も必須です。
さらに言えば、筋トレを行うことで筋肉の分解・合成が起こるのですが、この「代謝」を促す役割を持つのがビタミンB群と亜鉛などのミネラルです。これらも必須の栄養素と言えるでしょう。
これらの栄養素が不足すると、身体を大きくする材料や道具がない状態になるので、いくら筋トレをしても筋肉を増強することはできません。そのため、これらの栄養素を多く含む食材をバランス良く食べることが大切です。
タンパク質は動物性なら鶏・牛・豚などの肉類と魚、植物性なら大豆製品などに多く含まれます。また、糖質(炭水化物)は穀類や芋類・果物に多く含まれると言われています。
ビタミン・ミネラルは野菜や果物に豊富というイメージがありますが、代謝に必要なビタミンB群等は、果物より肉や穀類の方が多く含まれている食材が多いように思います。
では、バナナはどうでしょうか。
肉・魚・穀類、あるいは他の果物等の食材と比較して、どのような栄養素が「優れている」と言えるのか。
インターネットで検索すると出てくる記事を確認してみましょう。
インターネット上の記事ではどう書かれているか
インターネット上の記事を調べると、概ね「バナナは糖質が豊富で、低脂質。カリウム・マグネシウムなどのミネラルが豊富」という評価です。
糖質の効果は前述のとおり、筋トレを行う際のエネルギー源になる、というものですが、カリウム・マグネシウムの効果は体内の調整機能に関わるものです。
一般にカリウムは体内の水分量の調整を行う機能、マグネシウムは体温調整を行う機能に関係しており、大量の発汗でこれらのミネラルが不足すると筋肉のこわばり・ひきつりといった症状が発生すると言われています。
「足がこむら返りを起こす」などですね
筋トレを行う際に、手足が痙攣したりつったりするのを予防する意味で大切と言えば大切なのですが、「体内の水分量」や「体温調整」を気にする種目として思い浮かぶのはマラソンやサッカーなど屋外で長時間活動する種目であり、「筋トレ」と紐づくイメージはありません。
自宅でトレーニングする場合は環境も様々でしょうが、フィットネスジム等でトレーニングする際は、通常屋内で空調が整った環境でしょうからマラソンやサッカーなどと比べると発汗や体温上昇に伴うリスクは、さほど重視する必要はないように思います。
つまり「筋トレにあまり関係ないのでは?」というのが正直な感想です。
その他、インターネット上の記事で見かけた、あんじょうとしては疑問に思う効果を3つ、ご紹介します。
- カリウムが乳酸の排出を促し、筋肉痛を緩和!(某フィットネスクラブのブログ)
- ポリフェノールが活性酸素の発生を抑え疲労回復に効果!(同上)
- クレアチンが豊富で筋力アップと運動能力向上に一役!(某オウンドメディア)
各記事を非難する意図はないため、どのサイトに記載されているかは伏せますが、これらは少しオーバーに言い過ぎではないか(もしくは根拠に乏しいのではないか)と感じます。
バナナは本当に筋トレに効果的な食材か?
先ほど例示した「疑問に感じる」バナナの効果についてあんじょうの見解を書きます。
例えば、筋トレにより蓄積される乳酸は、従来「疲労物質」と呼ばれ筋肉痛の原因とされてきましたが、近年は乳酸と筋肉痛の関係は否定されています。
また、クレアチンが豊富といっても、肉や魚の含有量には敵わないでしょうし、そもそも筋トレにおいて「食べたら、すぐ効果がでる」ような即効性はありません。
ポリフェノールについては公的な資料で含有量が確認できなかったのですが、そもそもポリフェノール自体の摂取量と効果の関係性に疑問があります。(ポリフェノールによる抗酸化作用と体感できる疲労回復とは直接的につながらないように思います)
いかがでしょうか。これらのインターネット上の記事に限らず、TVのバラエティ番組などでも「バナナは筋トレやダイエットに良い」という話をよく耳にします。
あんじょう自身も良い食材だとは思うものの、少し過剰に評価されている気もしますので、もう少し掘り下げて確認してみることにしましょう。
栄養成分表からバナナの効果を考える
バナナの栄養成分
バナナの栄養成分を確認しておきましょう。下表は文部科学省の「日本食品標準成分表(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html)」を抜粋したものです。
成分名 | 値 | 単位 |
エネルギー | 93 | kcal |
水分 | 75.4 | g |
たんぱく質 | 1.1 | g |
脂質 | 0.2 | g |
炭水化物 | 22.5 | g |
灰分 | 0.8 | g |
ナトリウム | 微量 | mg |
カリウム | 360 | mg |
カルシウム | 6 | mg |
マグネシウム | 32 | mg |
リン | 27 | mg |
鉄 | 0.3 | mg |
亜鉛 | 0.2 | mg |
銅 | 0.09 | mg |
マンガン | 0.26 | mg |
ビタミンA | 5 | μg |
ビタミンE | 0.5 | mg |
ビタミンB1 | 0.05 | mg |
ビタミンB2 | 0.04 | mg |
ナイアシン | 0.7 | mg |
ビタミンB6 | 0.38 | mg |
葉酸 | 26 | μg |
パントテン酸 | 0.44 | mg |
ビオチン | 1.4 | μg |
ビタミンC | 16 | mg |
成分表を総括すると、
三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)の中では炭水化物が豊富で低脂質・低タンパク質。ビタミン・ミネラルの中ではカリウム・マグネシウム・ビタミンB6が豊富。
といったことが言えると思います。
ただ、炭水化物が豊富と言っても、米や芋類などには敵いません。例えば白米(ごはん)ですと、100g中炭水化物は37.1gで、バナナの22.5gより豊富です。同じエネルギーを得る場合、食材の量が少ないほうが消化が早いので、エネルギー補給だけであればバナナを1本食べるより、「おにぎり」や「干し芋(=ボディビルダーの方がよく食べています)」を少量だけ食べる方が効率が良いと言えるでしょう。
ただ、後述しますがバナナの炭水化物には白米や芋類にない利点があります
カリウムの多さが特筆されますが、これは前述のように屋内で行う筋トレにおいては、それほど重視すべき(通常の食事以外に補給しなければならないほどの)栄養素でもないように思います。
ビタミンB6が豊富な点も利点といえば利点ですが、元々ビタミンB6は肉や穀類にもそれなりに含まれており、一般には不足しにくいビタミンと言われているため、特にバナナで摂取する必要性が高いわけではありません(下表)。
食品 | 100gあたり含有量(mg) |
鶏ささみ | 0.62 |
豚ヒレ肉 | 0.54 |
サーモン | 0.49 |
干しいも | 0.41 |
牛ヒレ肉 | 0.39 |
バナナ | 0.38 |
さつまいも | 0.33 |
玄米 | 0.21 |
「筋トレ飯」としてのバナナの効果
では、バナナの何が筋トレに良いか、という話をしましょう。
あんじょうが着目したいのは穀類や一般の果物と比較しても低GI(グリセミック・インデックス)値であることと、手軽・安価にカロリー補給ができる点の2つです。
GI値というのは、血糖値の上昇スピードを示す指数です。高いほど肥満や心筋梗塞のリスクを高めるということで、世間的には低GI値の食品が好まれる傾向にあることは、皆さんもお聞きになったことがあると思います。
よく「パンは米よりGI値が高い」とか「白米はGI値が高く、玄米はGI値が低い」「玄米よりさつまいもの方が低GI値だ」と言ったことを耳にしますが、これらと比較してもバナナは低GI値です。(下表)
食品 | GI値 |
じゃがいも(ゆで) | 78±4 |
パン | 75±2 |
ごはん | 73±4 |
玄米 | 68±4 |
さつまいも(ゆで) | 63±6 |
バナナ | 51±3 |
これは、筋トレ目線で考えた場合、体内に緩やかかつ長時間かけてエネルギーが供給される、ということを意味します。
高GI値の食品は体内にすばやくエネルギーが供給されますが、一方で急な血糖値の上昇によりインスリンの分泌を促し「揺り戻し」を発生させます(食事後急速に血糖値が上昇した後、30分程度で血糖値が急降下します)。
これは運動でパフォーマンスを発揮しなければならない状況においては逆効果になります。バナナはその点、糖質の消化吸収が緩やかなため、運動時のエネルギー補給食材としては優れていると考えることができるでしょう。
また、以外と「安価で手軽」な点も無視できません。現在バナナはひと房4本程度で200円〜300円程度。つまり1本(一食)あたり50円強です。持ち運びも簡単で入手も簡単。同じ手軽さのコンビニおにぎりやゼリータイプのエナジー飲料などが数百円することを考えると、このコストパフォーマンスと取り扱いの良さは特筆ものです。
つまり、一言で表現してしまえば、
「運動前のエネルギー補給に使えるコストパフォーマンスの良い低GI食品」
というのが「筋トレ飯」としてのバナナの偽らざる姿だと思うわけです。
バナナを食べるタイミングは筋トレ前?筋トレ後?
バナナを食べるタイミングは「筋トレ前」がおすすめ
見出しに書いてしまいましたが、バナナを食べるタイミングは「筋トレ前」をおすすめします。
筋トレ後が悪いわけではないのですが、前述のように低GI食品であることを考慮して、筋トレのエネルギー源として1時間〜2時間前に1本食べておく、というのがおすすめです。
無論、筋トレ前に十分な食事ができ体内にエネルギーが足りている状況であれば敢えて食べる必要はないと思いますが、「夕食前、仕事帰りにジムによって筋トレする」ような状況の場合は、昼食から時間が経過し血糖値も落ちた状態です。それでは筋トレで最適なパフォーマンスを発揮できません。
このような場合は、仕事を終える頃にバナナを1本食べてからジムに向かうと、ちょうど良いのではないでしょうか。
筋トレ後に食べるなら、プロテインと一緒が効果的
筋トレ後は筋合成を高めるために必要な栄養分を速やかに体内に送り込むことが必要です。筋肉の分解と合成は、筋トレ中から始まっていますので、本来は筋トレ前に十分なタンパク質と糖質を摂取しておくべきなのですが、不足している場合は筋トレ後に速やかに摂取するようにしたいものです。
筋合成を高めるためにはタンパク質と同時に糖質とビタミンB6を摂ると効果的です(インスリンの分泌が筋合成を高めます)。具体的にはプロテイン(タンパク質)とバナナの組み合わせ。これがまさに「タンパク質+糖質+ビタミンB6」の組み合わせになります。
インスリンの分泌を高めたいなら、バナナではなく、ごはん等の高GIの炭水化物と肉類(=タンパク質+ビタミンB6)を組み合わせたほうがより良いのかもしれませんが…。50代・60代で血糖値が気になる方は低GIのバナナとプロテインとの掛け合わせも良い組み合わせのように思います。
プロテインの味にもよりますが、ミルクやヨーグルト系、チョコレート系のフレーバーのものはバナナとも相性が良いので、場合によっては、バナナとプロテインを一緒にシェイクしても美味しく飲めると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「筋トレ飯」「ダイエット飯」としてのバナナの効能については少し大袈裟な情報が多いように感じたので、自分なりの考えを書かせていただきました。
繰り返しますが、あんじょうは、「バナナはアスリートの補助食材として優秀な食べ物」だと思っています。ただ、正しく取り入れるためにも、効果の有無は正しく把握しておきたいものです。
それでは、本日はこのへんで失礼します。最後までお読みいただきありがとうございました。
- バナナには糖質とミネラル類(カリウム・マグネシウム等)が豊富。激しい運動で失われるエネルギーと、発汗で失われるミネラルの補充には効果的。
- 筋トレ時には手軽なエネルギー補充食品として、ダイエット時にはカロリー控えめで低脂質・低GI値な食品として活用できる。
- 「筋トレ飯」として考えた場合、食べるのは「筋トレ前」がおすすめ。ただし、筋トレ前なら開始の1時間以上前に食べたい。筋トレ後なら終了後速やかに、プロテインと一緒に食べるのがおすすめ。
- 世間ではバナナの効能が若干大袈裟に取り上げられている。栄養成分を確認し、正しい知識で正しく摂りましょう。