筋トレ系「最新理論」や「論文」とどう付き合うかを考える

当ページのリンクには広告が含まれています。
最新理論や論文とどう付き合うかを考える

 AROUND60 FITNESS(ロクマルフィット)をご覧いただきありがとうございます! 筋トレ歴10年の副業ライターあんじょうです。

 あんじょうは普段から自分の知識補充のため筋トレ関連の動画やブログをチェックしています。

 一口に筋トレ関連といっても色々なジャンルがありますが、その一つに「最新理論・論文の紹介」系があります。

「この方法が一番効果が大きい!」「論文ではこういう結果だ」という類ですね。

 ものによっては全く反対の理論もあったりして混乱するのですが、本日は「このような情報をどう咀嚼すれば良いのか」、「どう付き合っていけば一番メリットがあるか」を考えてみたいと思います。

 本日もお付き合いください。

目次

「論文」や「最新理論」を扱うYouTubeチャンネル

 ネットを検索すると、たくさんのYouTubeチャンネルやブログがありますが、あんじょうがよく参考にさせていただいているチャンネルの一部をご紹介します。以下のようなチャンネルです。

筋肉あるある

論文で解決〜筋肉と栄養を科学する〜

 それぞれ、論文を引用し論文中のグラフや表なども引用しながら解説してくださっています。

 他に、論文やデータを示すというのとは少しニュアンスが違いますが以下のチャンネルもよく拝見しています。

KAIZEN FITNESS 101

 こういった動画を1本つくるには、動画作成・編集作業のほかに、事前調査や翻訳などの作業が伴うわけで、日々の作業は結構大変だろうと思います。情報源として日々参考にさせていただき、大変ありがたいと思っています。

これらのチャンネルが発信する情報は正しいのか?

 …と、いきなり参考にしている情報を疑うような標題から始めてしまいましたが、それぞれのチャンネルが発信されている主張の正誤を指摘したいわけではありませんし、指摘できるほどのエビデンスもあんじょうにはありません。

 チャンネル上で取り上げられている論文の存在や、引用されているグラフ・表の説明が妥当かどうか(いわゆる、都合の良いところだけを切り取りをしていないか、等)については一次情報を確認すれば検証できるのでしょうが、そこは情報発信されているYouTuberさんを信じれば良いと思っています。

 たまに、サムネの見出しとコンテンツの中身にギャップがあると感じたり、見出しがちょっと断言しすぎでは?と思うときもありますが、ここは、あんじょう自身も他人のことは言えません。

 情報発信する側の言い訳になりますが、検索してクリックしてもらわなければ、記事を読んでいただけないので、ついついキャッチーな表現を使ってしまいがちです。情報発信者としては、本当に悩むところです。

 今回、主にお伝えしたいのは、情報発信側ではなく、「情報を受け止める側が気を付けるべきこと」についてです。次項以降でご説明しますが、お伝えしたいことを要約すると以下2点になります。

  • 論文上のデータや結果は、ほぼ全て「統計分析されたデータ」。統計情報はデータの読み解き方を知らないと解釈を間違えやすい。
  • 「論文の主張が正しいかどうか」と「自分に当てはまるかどうか」は別の話。

では、具体的に見て参りましょう。

論文情報を読み解く際に知っておくべきこと

データを読み解く際に理解しておくべきこと

 論文で使われるデータを読み解く際には以下のことを理解しておく必要があります。YouTubeなどで情報発信される方も、ちゃんと以下の点をコンテンツ内で説明されているケースもありますが、ことさらに強調する部分でもなく視聴者としては聞き飛ばしてしまいがちな点です。

  •  実験や分析はほぼ全て「複数の被験者」を対象に行われている。
  •  複数の被験者で実験するので結果には当然ながら「ばらつき」が生じる。
  •  「複数の被験者」がどのような特性を持つかは実験によって異なる。

 これだけ読むと当たり前のように思えますが、実際に「Aというトレーニング手法の方が、Bというトレーニング手法よりも10%効果が大きかった」という説明を聞いたときに、「効果が5%の人もいれば、効果が15%の人もいたんだな」と理解したり、「この実験結果は、被験者が特別な集団だったからで一般人には当てはまらないな」と理解する人は少ないと思うのです。

 以下、上記3点を掘り下げたいと思います。

被験者の人数によって分析結果の精度は大きく左右される

 まず1点目「実験や分析はほぼ全て『複数の被験者』を対象に行われている」ということについてお話します。

 被験者の数は多ければ多いほど分析結果は正確になります。ここは常識的にピンときていただけるかと思いますが、世論調査などで「アンケート対象者が2名」の調査結果と「アンケート対象者が2000名」の調査結果では、どちらが世論を反映しているか、という話と同じですね。

 これは、実験や分析の結果が「正しいか、正しくないか」ではなく「精度が良いか、悪いか」の話です。調査した結果は事実でも、それが「普遍的な法則」なのか、「たまたまそうだった」だけなのかは、別の話です。

サイコロを2回ふったら連続で「1」の目が出た…という場合、連続で「1」の目が出たことは事実ですが、だからと言って「サイコロを振ると必ず1がでる」とは言い切れないのと同じですね。

実験や分析の結果は「ばらつき」を統計的に処理したものである

 次に「結果には『ばらつき』が生じる」ことについてお話しましょう。

 被験者が複数いる場合、それぞれの特性によって結果に差がでます。筋トレの実験で言えば、被験者の年齢や性別、運動経験の有無などで差が出るでしょう。

 ですので実験や分析を行う場合、これらの「ばらつき」を統計的に処理して「こういう傾向がある」という説明をします。具体的な表現の例をお示しすると母数1,000人の集団において、筋肥大効果が確認された。その効果の中央値は『5%』で、分散の標準偏差は30%だったのような説明です。普段統計データに触れていない人にはピンとこない表現かもしれませんが、これは、「1,000人のうち効果の高い人から低い人まで順に並べたとき、上から500人目の人の効果は『5%』だったが、効果がそれより大きかった人も、小さかった人も結構いる。」という意味になります。

 しかし、これがメディア(WebだけでなくTVなども含みます)で情報発信されると「こういう傾向がある」という言い方ではなく「こういう結果だった」という断定調で表現されることが多々あります。上記の例で言えば「1,000人を対象に実験したら、5%の筋肥大効果が確認された」というふうに、あたかも1,000人全員に5%の筋肥大効果があったような表現です。

 ここは、惑わされないようにしなければなりません。

実験結果は被験者の「特徴」によって変わる

 最後に「被験者の『特徴』による結果の差」についてお話します。

 実験や分析は複数の被験者を対象に行われているのですが、その対象者の特性によって実験結果は大きく変わる可能性があります。例えば筋トレの実験を行うにしても、「若者から高齢者まで満遍なく実験する」場合と、「大学生を対象に実験する」場合、「介護施設の高齢者を対象に実験する」場合ではそれぞれ異なる結果がでる可能性があります。

 これは、「ボディビルダーを対象にするか、運動経験のない一般人を対象にするか」や「男性か女性か」でも同様です。

 実験や分析の論文には、必ずこういった前提条件が記載されていますし、それを発信するメディアでも(少なくともあんじょうがチェックしているYouTubeチャンネルでは)明確に前提を説明されていますが、視聴する側がそこを意識していなければ、数字だけが頭に残ってしまいます

 実験結果から導かれた結果はあくまでも被験者の集団において事実だっただけであり、それが全年齢・全世代・全性別において普遍的な結果かどうかは別の話です。

論文を解釈するには、統計データを読み解く知識が必要

 以上、色々と述べましたが、要は「論文のデータや分析結果を参考にする際には、これらが『統計データ』であることに留意して読み解く必要がある」ということです。

 難しく考えれば、「読み解き」するには統計手法やデータ分析手法の知識が必要…という話になるのですが、この記事では、難しいことは割愛し、ごく簡単に「どういうことに気をつければ良いか」というポイントを3点ご紹介します。

論文の統計データを読み解くポイント

「母集団」の特徴を把握する

前項の「被験者の人数」「被験者の特徴」について説明した内容について、よくチェックしましょう、という話です。

チェック1:被験者の人数

 被験者の人数のことを統計学的な表現で言えば「母集団」と言いますが、これが多いほど信頼性が高く、少ないほど精度が悪くなります。統計手法にもよりますが、被験者数が数十名程度以上の実験であれば概ね統計的に信頼できるデータになりますが、数名程度の実験であれば、その結果が普遍的に言えることかどうかは怪しいと考えた方が良いと思われます。(繰り返しますが、実験結果が事実かどうかの話ではなく、結論の「精度」の話です)

チェック2:被験者の特徴

 被験者の特徴、すなわち性別や年齢層、運動経験の有無などについて、論文上はまず間違いなく記載があるはずですが、情報発信をされているメディアがそのことに言及しているかどうかはメディアによります

 「被験者がどういう人たちであったか」は、実験・分析結果が自分自身に当てはまるのかどうか、を判断するための重要な情報です。

 視聴者側もさらっと流してしまいがちですが、実験結果の「数字」を記憶に残すならば、その実験・分析は「どのような特徴を持っている被験者を対象に行われたのか」もセットで記憶するようにしましょう。

統計データの「ばらつき具合(分散)」を意識する

 ここまで統計学的な解説している記事やコンテンツはあまり見かけないのですが、統計的手法で処理された分析結果では、結果の「ばらつき具合(分散)」の大小が大事な要素になります

 ひとつ架空の例を出します。

例:筋トレ手法の違いによる筋肥大の効果を比較するため手法Aと手法Bをそれぞれ集団aと集団bに適用して実験した。手法以外の差をなくすため、集団aと集団bは同じ人数・同じ年代・性別・筋トレ経験レベルで統一した。結果は後述の図のとおりとなった。

「手法による効果の違い」の例1

 いかがでしょうか。いずれも平均は「10%」なのですが、手法Aの場合、大半の被験者において10%の効果があったのに対し、手法Bの場合は効果が15%以上の被験者と効果が5%以下の被験者に大きく両極端に分かれてしまいました。集団a、集団bともに平均値や中央値(集団全体のちょうど真ん中の順位の人の値)は「10%」で、一見効果に違いがないように見えますが、実は手法Aに比べ、手法Bは、効果のある人と効果のない人が極端に分かれる「当たり外れの大きい手法」であることが読み取れます。

 このような「結果のばらつき」に関する情報をWebやTVなどのメディア経由で知ることは難しく、知ろうとすれば一次情報(=論文そのもの)をチェックするしか方法がないのかもしれませんし、「そこまでやる必要があるのか?」という話ではありますが、せめて「こういう留意ポイントもあるのだ」くらいは知っておいていただければと思います。

自分が「平均的」だと思わないこと

論文では、複数の被験者を対象に実験・分析し「平均するとXXのような傾向がある」という結論を出します。しかし、「平均するとXX」だからといって、それがそのまま自分自身に当てはまると考えてはいけません

自分自身が「平均的」ではない可能性もあるからです。

 人の性(さが)として、ついつい自分は「普通」だと考えてしまいがちですが、 他人にとって当てはまることが、自分にも当てはまるかどうかは、実際にやってみなければ誰にもわかりません

例えば、「自分」は下図のところに位置している可能性もあるわけです。

「手法による効果の違い」のどこに自分が位置するか…?

「最新理論」や「論文」とどう付き合うか

 以上、「最新理論」や「論文」の論拠となる統計データを読むときに気を付けるべき点を中心にお話させていただきました。色々と述べましたが、結論を一言で申せば「理論や論文が自分に当てはまるかどうかは、自分で実験してみないとわからない」ということです。

 ですので、こういった論文や理論を実践する際には、「試行錯誤」が欠かせないのですが、その際の大事なポイントは「記録する」ということです。

 取り組みを継続するには効果の有無が知りたいところですが、正直言って効果があるかどうかは、長期間(数ヶ月単位)やってみないと目で見て確認できるレベルにはなりません。

 ですので、体脂肪計などで自分の体脂肪率や筋肉量を計測し、経過を記録・管理することが取り組みのモチベーションを保つ意味で重要になります。過去の記事でも言及していますが、ボディメイクやダイエットの際には、体組成計とあすけんなどの管理アプリの利用をおすすめします

 それでは、本日はこの辺で失礼します。最後までお読みいただきありがとうございました。

↓こちらの記事もご覧ください!

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
目次