はじめに
AROUND60 FITNESS(ロクマルフィット)をご覧いただきありがとうございます! 筋トレ歴10年の副業ライターあんじょうです。私は過去投函した記事で何度か「50代・60代のアラ還世代がボディメイクするなら身体の前面より背面を鍛えたほうが良い」といった趣旨のことを言っているのですが、本日は体の前面=大胸筋のお話です。
どなたかのブログで「みんな大好き大胸筋」といったフレーズを見かけましたが、このフレーズのとおり、なぜか男性は世代に関わらず大胸筋を鍛えたがります。発達した大胸筋は「鍛えた身体」を代表するパーツであり、象徴でもあるからかもしれません。
しかし、これも世代に関わらず多くのトレーニーを悩ませるのは、「大胸筋の内側」が外縁に比べて発達が悪いことです。ネットには「内側を鍛える」記事が氾濫していますし、あんじょう自身、そういう類の記事を見つけるとつい読んでしまうのですが、内容はさまざまで、どれが本当なのか・何が一番なのかを見極めるのは難しい状況です。
そこで、本日はプロのトレーナーや、いわゆる「筋トレガチ勢」の方々の意見も参照しつつ、理屈っぽいアラ還オヤジの視点から、「大胸筋の内側を発達させる」方法について考えてみたいと思います。どうぞお付き合いください。
「大胸筋の構造」のおさらい
皆さんご承知だと思いますが、大胸筋は上部・中部・下部の三つの部位から構成されています。筋肉が骨格についている部分を「起始部」「停止部」と呼ぶのですが、いわゆる「大胸筋の内側」と呼ばれる部分は、大胸筋中部の起始部に該当します。
一般的に、大胸筋を鍛えてもこの起始部周辺が盛り上がらず、「大胸筋の外側は発達しているのに内側が発達していない」という話になりがちです。この状況は、大胸筋の構造を解剖学的に理解すれば、それが当然であることがわかります。まずは、これを理解することが効果的なトレーニングを行う上での第一歩となります。
なぜ大胸筋の内側が発達しないのか
大胸筋の停止部は上腕骨に束ねられていますが、起始部は胸骨に広がる形で付着しています。そのため、一定面積あたりの筋繊維の密度は腕側(外側)のほうが高く、内側(胸骨側)は低くなります。筋繊維が同じ太さであれば、上腕骨付近が最も分厚く、胸骨側が薄くなるのは自然なことです。
実際には骨に付着する側には腱があり細くなっているため、束ねられた腕側の筋肉の厚みは、大胸筋の中腹あたりの厚みと概ね同じ程度になり、胸骨あたりの厚みだけが薄く見えてしまうのです。
大胸筋の内側が発達している人はどうなっているのか
大胸筋の内側が発達している人を見ると、「内側が発達している」というよりも「外側から内側まで全て盛り上がっている」と表現するほうが正確です。どんな人も内側は腕の近くや胸の中央よりは薄いですが、内側もそれなりに分厚く見えるだけです。つまり、一言でいえば、
内側が発達しているのではなく、大胸筋全体が発達している。= 大胸筋の内側が薄い人は大胸筋全体が薄い
ということです。この現実を受け止められるかどうかで、自身のトレーニング目標を現実的に設定することができます。
つまり「内側・外側と言う前に、大胸筋全体を大きくするにはどうしたら良いかを考える」ということです。
大胸筋の内側だけを集中的に鍛える方法は?
結論から言うと、あんじょうは、現実的に、大胸筋の内側「だけ」を集中的に鍛える方法はない、と考えています。
大学の研究・実験レベルではそういう話もあるかもしれません。しかし、それが「パッと見てわかる」程度の効果かというと、そうではないと思うのです。
生物学的・運動生理学的に考えると複雑ですので、物理学的に考えてみましょう。
筋肉の伸び縮みをゴムチューブに例えます。ゴムの両端を持って引っ張るとゴムは伸びますが、その際、ゴムにかけられた「引っ張る力」は、ゴムのどの場所でも同じはずです。
ゴムの柔軟性が場所によって違う場合、伸びる長さはゴムの場所によって違いがでる可能性はありますが、かけられている力自体が、ゴムチューブの左側では5kgf、右側では1kgfといったことは起こりえません。つまり、左右から引っ張る力はゴムチューブ全体に均一に働くわけです。
筋肉に話を戻します。筋トレをすると、筋肉は、「伸ばそう・引っ張ろう」とする力に抗い縮まなければなりません。その際、筋肉の起始部と停止部および筋腹(筋肉の中央・膨らんだ部分)に加えられる力は均一です。
筋繊維は加えられた力に応じて鍛えられ太く・強くなります。筋肉全体に均一に力が加えられるのであれば、その刺激に対し筋肥大の反応の良し悪しはあるにせよ、「一部分だけが鍛えられる」ということは考えにくい、というのがあんじょうの考えです。
無論、筋肉は生きた細胞でありゴムとは違います。細胞単位で見れば、同じ刺激を与えられても「働きの良い筋繊維(部位)」と「働きの悪い筋繊維(部位)」があるかもしれません。しかし、それが「目に見えてハッキリわかる」レベルで結果(サイズ)に現れるとは考えにくいのです。
上部・中部・下部に分かれる大胸筋群や、前部・中部・後部に分かれる三角筋群など、「筋繊維のパーツ」ごとに鍛え分ける話はいくつかありますが、筋繊維の起始付近・停止付近を鍛えわけるという話は、不思議なことに大胸筋以外では聞きません。色々と理論や研究論文を追求すれば内側「だけ」を集中的に鍛える方法はあるかもしれませんが、その探究に力を入れる時間は、そのまま「内側も含め、大胸筋全体を発達させる」ことに使ったほうが有意義だと思う次第です。
大胸筋の内側を発達させるにはどうすれば良いか?
基本的なアプローチ
前述のとおり、大胸筋の内側を発達させるためには、大胸筋全体の筋繊維を太くするようなアプローチが現実的だと考えます。
特定の部分だけを鍛えるのではなく、全体的に筋肉量を増やすことで、内側も自然と発達します。大胸筋のトレーニングにおいて、全体的な厚みを増やすことが最も重要なポイントです。
具体的には、ベンチプレスやダンベルプレスといった基本的なコンパウンドエクササイズを中心に行い、大胸筋全体を鍛えましょう。
繰り返しになりますが、大胸筋の内側が発達している人は、「内側だけ」が発達しているわけではなく、全体的にしっかりとした厚みを持っています。
全体を発達させるためには、コンパウンド種目で比較的高重量(1セット6回〜8回が限界)を扱うアプローチが有効です。この方法で、大胸筋の内側も含めた全体的な成長を促進することができるでしょう。
大胸筋の内側「も」発達させる効果的な筋トレ種目
「内側」も含め、大胸筋全体を発達させるために効果的なテクニックとしては、「ストレッチ局面を意識する」ことです。「大胸筋の内側を鍛える」という記事の多くは、収縮局面で大胸筋の内側に「効かせる」ことを重視する記事をよく見ますが、筋肥大を促すのは、どちらかというと収縮ポジションにおける負荷よりもストレッチポジションにおける負荷(=筋肉が伸ばされた状態で負荷がかかる状況)です。
トレーニングの際には、肩関節の怪我に注意しつつ、大胸筋を十分にストレッチさせる種目を選ぶことが重要です。
おすすめの種目としては、マシンペックフライです。マシンを使用することで安全に大胸筋をストレッチさせることができ、収縮局面でも負荷が抜けないため、「2度美味しい」と言えるでしょう。フリーウェイトを使用するダンベルフライも同様の効果が期待できるものの、収縮局面では負荷が抜けてしまいますし、高重量を扱うとストレッチポジションの際に肩への負担が過度になりすぎる懸念もあります。怪我のリスクを考慮すると、マシンの使用がより好ましいと言えるでしょう。
フリーウェイトしかない場合は、高重量を扱いつつ、腕の角度をダンベルプレスとダンベルフライの中間くらいに収める「ダンベルフライプレス」がおすすめです。
ベンチを15度ほど傾けて、胸を十分に張って(肩甲骨を下制して)行えば、ちょうど大胸筋の上部から中部の、一般的に発達が遅れがちなパーツに刺激がよくはいると思います。是非お試しください。
まとめ
本記事では、大胸筋の内側を効果的に発達させるためのポイントについて詳しく解説しました。
まとめますと、以下のとおりとなります。
- 大胸筋の内側「だけ」を発達させる方法は現実的には「ない」と考えて良い。
- それよりも大胸筋全体のサイズアップを目指すべき。そうすれば大胸筋の内側も発達する。
- 大胸筋全体のサイズアップのためには、ストレッチポジションでの刺激が効果的。
- 種目としてはマシンペックフライがおすすめ。フリーウェイトしかない場合は、ダンベルフライプレス(フライとプレスの中間ポジションで動作)を高重量で行う方法がおすすめ。
それでは、本日はこの辺で失礼します。最後までお読みいただきありがとうございました。