AROUND60 FITNESS(ロクマルフィット)をご覧いただきありがとうございます! 筋トレ歴10年の副業ライターあんじょうです。
特定の運動方法・ダイエット方法を悪く言う意図はないのですが、書店に並ぶ「XXストレッチを行うだけで激痩せ!」や「1日5分のXX運動でマイナスXX歳若返る!」といった類の本が気になって仕方ありません。
あんじょうの偏見かもしれませんが、これらの本の標題やキャッチコピーには「これだけで痩せる!」的なことが書かれているにも関わらず、内容的には「これだけでは痩せられない」ものが多いように思います。
これらの本で決まって出てくるキーワードが「代謝を上げる」「代謝がよくなる」です。
そして、これらの本で、ほぼ出てこないのが「どの程度」代謝を上げれば「どれだけ痩せる」という説明です。
今回、このあたりを掘り下げてみたいと思います。
本日の記事は、「色々なダイエット法を試しては失敗されている方」向けです。骨子は以下のとおりです。
- 代謝の分類の一つに「基礎代謝」と「活動代謝」がある。どちらの代謝が上がってもカロリー消費は増える。
- 基礎代謝を上げるには筋肉を増やすこと。活動代謝を上げるには運動量を増やすことが必要。
- 巷のダイエット本の方法で代謝が「上がる」程度を想定してみると、せいぜいこの程度(=例示)。
- 代謝は上げたほうが良いが、誤解があると失望も大きい。正しい知識で正しく取り組むことが大事。
それでは参りましょう。
そもそも「代謝」とは何か
「代謝」の説明
まず始めに「代謝」という言葉を正しく知っておきましょう。以下の説明はウィキペディアから引用したものです
結構難しいことを書いていますが、要約すると代謝とは「食事と呼吸で体内に取り込んだ栄養と酸素で生命活動に必要な物質(=筋肉・内臓・血液等)やエネルギーを生み出したり、不要になった老廃物を体外に出す化学反応」のこと、と考えれば良いと思います。
代謝には大きく分けて「エネルギー代謝」と「物質代謝」があり、さらに細かく言えばエネルギー代謝は「基礎代謝」「活動代謝」「食事誘発性熱代謝」の3種、物質代謝は「同化」「異化」の2種に分類できます。
本日はダイエットに関連するお話ということで、エネルギー代謝のうち「基礎代謝」と「活動代謝」の2つについてもう少し深く説明します。
「食誘発性熱代謝」もダイエットに深く関わる話なのですが、これは食事管理のお話をする際にでも取り上げさせてください
基礎代謝と活動代謝
「基礎代謝」と「活動代謝」について説明します。どちらもエネルギーを生み出す化学反応(あるいは、それに必要なエネルギーの量)である点は共通していますが、エネルギーを消費する目的が若干異なります。
呼吸や心臓の拍動、脳や内臓の活動、体温維持など生命を維持するために必要なエネルギーを生み出すこと。転じて「生命を維持するために必要なエネルギー量」のことを指す場合もある。就寝など安静にしているときでも発生し、1日の総消費エネルギーの6割から7割を占めると言われている。
運動や仕事・家事など身体を動かすために必要なエネルギーを生み出すこと。転じて「体を動かすのに必要なエネルギー量」のことを指す場合もある。1日の総消費エネルギーの2割から3割を占めると言われている
つまり、基礎代謝は「生きて呼吸しているだけで必要なエネルギー(or 消費カロリー)」、活動代謝は「運動に必要なエネルギー(or 消費カロリー)」と考えていただければ良いかと思います。
ここで押さえておきたいのは、エネルギー消費全体からみると、基礎代謝の方が活動代謝より2倍〜3倍大きいということです。仮に「代謝を10%上げる」ことを考える場合、活動代謝を10%上げることを考えるより、基礎代謝を10%上げることを考えた方が、より多くカロリーを消費することにつながる…ということです。
「代謝を上げる」にはどうすれば良い?
知っているようで知らない「代謝の上げ方」
「代謝を上げる」という言葉、日頃からよく耳にしたり口にしたりしますが、具体的には何をどうすれば代謝は上がるのでしょうか。
冒頭に挙げたダイエット本などでは「XXストレッチをすれば血行がよくなって代謝が上がる」「XX運動をすれば、筋肉がついて代謝が上がる」といった記載を見かけますが、それによって「どの程度代謝が上がるのか」は良く分かりません。
次項では基礎代謝量と活動代謝量、それぞれどのように計算で求めるのかを確認します。計算式を確認すれば、どの変数を動かせば代謝量が変化するか、すなわち「どうすれば代謝が上がるのか」が見えてきます。
基礎代謝で消費されるエネルギーの計算方法
基礎代謝によりどの程度のエネルギーが消費されるかを算定するには、いくつかの方法があります。有名なものに「ハリス・ベネディクト方程式」などがありますが、欧米系のデータを元に算定されているため日本人には合わないと言われています。「日本版」も出ているようなのですが、より日本人に合致したデータということで、ここでは国内の研究機関等が発表しているものを紹介しましょう。
独立行政法人 国立健康・栄養研究所の基礎代謝量推定式
国立健康・栄養研究所で2000年以降に測定した日本人のデータに基づき、策定されたもので、さまざまな体格の人を計算することができます。
基礎代謝量=(0.1238+(0.0481 ×体重kg)+(0.0234×身長cm)-(0.0138×年齢)-性別指数※)× 1000 ÷ 4.186
※男性=0.5473、女性=0.5473× 2
国立スポーツ科学センターの基礎代謝量計算式
国立スポーツ科学センターの計算式もご紹介しておきます。計算式が簡易なのは良いのですが、除脂肪体重がわからなければ算定できないため、体組成計などで体脂肪率や除脂肪体重を把握できる方向けの計算式です。
全体重から脂肪量を引いたものに「28.5」を掛けて計算します。
基礎代謝量=28.5×除脂肪体重(※1)
※1 除脂肪体重=体重ー脂肪量(※2)
※2 脂肪量=体重×体脂肪率
具体的な計算例
例えば、体重65kg、身長170cm、体脂肪率20%の60歳男性の場合ですと、
国立栄養研究所の計算式を使うと、
基礎代謝量=(0.1238+(0.0481 ×65kg)+(0.0234×170cm)-(0.0138×60)-0.5473)× 1000 ÷ 4.186 =1,398kcal
となります。
一方、国立スポーツ科学センターの計算式を使うと、
基礎代謝量=28.5×(65kg-(65kg×20%))=1482kcal
となり、国立栄養研究所と国立スポーツ科学センターの計算結果には80kcal程度の差があります。
国立栄養研究所の計算式は身長・体重・年齢・性別のみで計算するのに対し、国立スポーツ科学センターの計算式は除脂肪体重を用いる一方、身長・年齢や性別は考慮しないことから、このようなことになります。
仮に、このモデルの体脂肪率が24.5%であれば(つまり、肥満体型で筋肉量が少ないとすれば)国立スポーツ科学センターの計算式でも基礎代謝量は1,398kcalとなり、算定式の差はなくなります。
国立栄養研究所の計算式の元になった母集団と国立スポーツ科学センターの計算式の元になった母集団の傾向が異なることから、このようなことが生じたのだと思われます。おそらく国立栄養研究所の方が「体脂肪率高めの方」を母集団として算定したのでしょう。
あんじょうの個人的感覚ですが、ボディメイクで使うなら国立スポーツ科学センターの計算式が簡便でなおかつ、体脂肪の増減と関連させて算定できるので使い勝手が良いように思います。
自分が減量する際に食事のカロリー計算を行うのですが、その際に、国立スポーツ科学センターの計算式で算定した基礎代謝量をベースにした方が、カロリー計算と実際の減量結果がぴったり合うように思えます。
基礎代謝量を増やすには、体重(除脂肪体重)を増やすしかない
前項の2つの計算式を見ていただくと、基礎代謝量は、身長・体重(あるいは除脂肪体重)・性別・年齢の違いで結果が増減することがわかります。
身長・体重(除脂肪体重)が多いほど基礎代謝量が多く、男性は女性より基礎代謝量が多い。また、加齢とともに基礎代謝量は少なくなっていく…ということですね。
しかし、50代・60代になってしまうと、努力したからといって「身長」が伸びるということは考えにくいですし、逆に「年齢」(加齢)を止めることもできません。性別も(生物学的には)自分ではどうにもならないものです。結果的に、個人が代謝を上げるために努力できることは「(除脂肪)体重を増やす」しかない、ということになります。
活動代謝で消費される消費されるエネルギーの計算方法
活動代謝を計算する方法に「TDEE」というものがあります。
TDEE(Total Daily Energy Expenditure=一日の総消費カロリー)は基礎代謝量に一日の活動カロリーを足したもので、活動の程度によって基礎代謝量に係数を乗じて算定します。
実はこの係数の適用の仕方が、ネット上の記事によってまちまちなのですが(=「中程度」や「激しい」のレベルが記事で異なる)、平均すると概ね以下のような基準と考えれば良いと思います。
活動の程度 | 計算式 | 「活動の程度」に該当する状況 |
ほぼ運動しない | 基礎代謝×1.2 | 寝たり起きたりする程度 |
軽い運動をする | 基礎代謝×1.375 | 座り仕事が中心で歩く機会が少ない |
中程度の運動をする | 基礎代謝×1.55 | 座り仕事が中心だが、通勤や買い物で歩いたり階段昇降を行う |
激しい運動をする | 基礎代謝×1.725 | 週に何度かスポーツジムに通っている。もしくは、日常的に立ち仕事をしている。 |
非常に激しい運動をする | 基礎代謝×1.9 | 肉体労働など長時間の運動を行なっている |
ここで注目していただきたいのが、TDEEは「基礎代謝×係数」で算定される点です。これの意味するところは、「除脂肪体重が増える(=筋肉が増える)と基礎代謝が増えるだけでなく、それに比例して活動代謝や総消費カロリーも増える」ということです。
「代謝を上げる」ことで、どれだけ痩せるのか?
体脂肪1kg減らすには、どれだけ代謝を上げなければならないか?
一般に、体脂肪1kgを減らすには、7,200kcal必要だと言われています。つまり体脂肪1kg分ダイエットしようとすると「食べる量を7,200kcal分我慢する」か「基礎代謝か活動代謝を上げて7,200kcal分多く消費する」ということになります。「7,200kcal分多く消費する」については「7,200kcal分、食べても太らない身体になる」と考えても結構です。
例えば「1ヶ月で体脂肪1kg減らす(=7,200kcal消費する)」あるいは、もしくは1ヶ月=30日と考え「毎日、茶碗にご飯1杯分(240kcal)多めに食べても太らない」ようにするにはどの程度代謝を上げる必要があるか、モデルケースを設定して計算してみましょう。
- モデル1:55歳男性、身長170cm、体重65kg、体脂肪率20%
- モデル2:55歳女性、身長155cm、体重50kg、体脂肪率30%
算定1:モデル1、2の基礎代謝量の把握
細かい計算式は割愛しますが、国立栄養研究所と国立スポーツ科学センター、それぞれの計算式で算定した結果が以下の表です。(基礎代謝量が少ない値が国立影響研究所の計算式で算定したもの、多い値が国立スポーツ科学センターの計算式で算定したものです。なお、小数点以下は四捨五入しています)
基礎代謝量 | |
(モデル1)55歳 男性 | 1,412kcal〜1,482kcal/日 |
(モデル2)55歳 女性 | 1,028kcal〜1,097kcal /日 |
この基礎代謝量は後述の「算定4」で使います。
算定2:1日あたり増やさねばならない消費カロリー
1ヶ月で体脂肪1kgを減らすということで、「1ヶ月=30日」と想定して計算しましょう。体脂肪1kg減らすには7,200kcal消費しなければなりませんので、計算式は、
7,200kcal÷30日=240kcal/日
となります。前述しましたが、目安にして、ちょうど茶碗一杯程度のごはん(150g)と同じくらいのカロリーですね。
算定3:基礎代謝向上によって消費カロリーを増やす場合
基礎代謝を上げることだけで「240kcal /日」を消費することを考えてみましょう。ここでは「基礎代謝を上げる=除脂肪体重を増やす=筋肉を増やす」ということになります。
内臓の重さを変えるのは難しいですし、体脂肪を減らすという目的ために、体脂肪で体重を増やすのは矛盾しているので、ここでは「筋肉」を増やして基礎代謝を上げることを考えます。
これは、性別・年齢・基礎代謝量に関係なく以下の式で計算できます。
増やすべき基礎代謝量=240kcal=28.5×増やすべき筋肉量(kg )
増やすべき筋肉量=240/28.5 = 8.4kg
つまり、男女とも、「基礎代謝を上げる」という方法では、筋肉を8.4kgも増やさないと、1ヶ月で体脂肪1kgのダイエットもできないということです。
よく「代謝を上げて、太りにくい体に!」といったキーフレーズを目にしますが、現実にはここまでしないと(=筋肉を8kg以上増やさないと)1日あたり茶碗1杯分のご飯のカロリーさえ消費できないのです。
なお、ここでは「(基礎)代謝は簡単に上げることができる」かのような言説に対し、それは少し難しい(それなりの時間と努力が必要)ということを申し上げたいだけでして、ダイエットにおいて「筋肉を増やすことが無駄だ」という意味ではありませんので、誤解のないようにお願いします。(むしろ「筋肉を増やす努力をして代謝を上げるべき」と考えています。詳細は文末で)
算定4:活動代謝向上によって消費カロリーを増やす場合
次に活動代謝を増やすことを考えてみましょう。実は、240kcal/日 を消費する運動量を算定するには、TDEEの計算式は大雑把すぎるのですが、このまま話を進めさせていただきます。
TDEEの計算式を流用すると、以下のことが言えます。
増やすべき消費カロリー(240kcal)=基礎代謝量×係数
この計算式に基づくと、先ほどの「算定1」で求めた基礎代謝量(多い方の値を使います)で以下の計算式で「係数」を逆算できます。
- モデル1 男性 … 240÷1,482=0.16
- モデル2 女性 … 240÷1,097=0.22
つまり、1日に240kcal多く消費しようとすると、運動係数を0.16〜0.22増やす必要がある、ということです。
これは、前出の一覧(以下に再掲)からすると、それぞれ、表の「程度」を1段階上げることに相当します。
程度 | 計算式 | 「活動の程度」に該当する状況 |
ほぼ運動しない | 基礎代謝×1.2 | 寝たり起きたりする程度 |
軽い運動をする | 基礎代謝×1.375 | 座り仕事が中心で歩く機会が少ない |
中程度の運動をする | 基礎代謝×1.55 | 座り仕事が中心だが、通勤や買い物で歩いたり階段昇降を行う |
激しい運動をする | 基礎代謝×1.725 | 週に何度かスポーツジムに通っている。もしくは、日常的に立ち仕事をしている。 |
非常に激しい運動をする | 基礎代謝×1.9 | 肉体労働など長時間の運動を行なっている |
つまり、日頃「軽い運動をする」程度の生活をしている人は、一段上の「中程度の運動をする」生活に変えていただく必要があり、すでに「中程度の運動をする」程度の生活をしている人は「激しい運動をする」生活に変えていただく必要がある、ということです。
食事を制限しない、という前提であれば、茶碗1杯分のごはんのカロリーを消費する程度でも、日々ウォーキングをしたり、スポーツジムに通うなり、「それなりの努力」をする必要がある、ということになりそうです。
巷のダイエット本の方法で、どの程度代謝がよくなるか
巷のダイエット本で推奨される運動として多いのが、「ストレッチ」や「軽い筋トレ」、「ウォーキング」などです。これらの方法で、基礎代謝が増えるのか(=筋肉が増えるのか)、あるいは活動代謝が増えるのか(=消費カロリーが増えるのか)を確認していきたいと思います。
結論だけ述べますと、個人の体重や運動の強度によって差はあるのですが、概ね以下のような結果になります。
筋肉が増えるか? | 消費カロリーは? | |
ストレッチ(10分〜20分) | 増えない | 20〜30kcal程度 |
軽い筋トレ・ヨガなど(30分程度) | ほぼ増えない | 100kcal程度 |
速めのウォーキング(30分程度) | 増えない | 150kcal〜200kcal程度 |
まず筋肉量が増えることに伴う基礎代謝の向上は期待できません。活動代謝についても、それぞれの運動による消費カロリーは1回30分程度では、茶碗1杯のごはんのカロリーも消費できない計算です。
運動強度にしてみれば、前出のTDEEの表の「中程度の運動」に相当すると思われます。
「代謝を上げる」という観点では、確かに活動代謝はわずかに上がるのですが、「激痩せ」できるほどには上がっていないということがご理解いただけるでしょうか。
無論「やらないよりは、やったほうが良い」のですが、「XXダイエットをやっているから」といって食事管理をおろそかにしてしまうと、逆効果になりかねないことは認識しておくべきでしょう。
50代・60代が代謝を上げるベストな方法は
巷の「代謝を上げる」ダイエット方法にダイエット効果はほぼない
以上、長々と書いて参りましたが、ここまでのお話を一言にまとめますと
「XXダイエットで楽して激痩せ!」のようなダイエット法には、「代謝を上げることで体脂肪を減少させる」ほどの効果は期待できない。
…ということになります。毎年、色々なダイエット方法が考案されて世に広まりますが、人間の体の生物学的な仕組みや、物理学的な法則がコロコロ変わるわけではありませんので、そんな「おいしい話」が次から次へと出てくると期待するほうが間違っているのかもしれません。
しかし、ダイエット効果があるほどに「代謝が上がる」ことはなかったとしても、「代謝を上げる」こと自体の意義がなくなるわけではありません。
ダイエット効果はなくとも、健康面で「代謝を上げる」意義は大きい
この記事の冒頭で以下のように「代謝」の説明をさせていただきました。
代謝とは「食事と呼吸で体内に取り込んだ栄養と酸素で生命活動に必要な物質(=筋肉・内臓・血液等)やエネルギーを生み出したり、不要になった老廃物を体外に出す化学反応」のこと。
「代謝が上がる」ということは「生命活動に必要な物質(=筋肉・内臓・血液等)を生み出す」「不要になった老廃物を体外に出す」という化学反応が促進されるということです。
これは、よくある言葉でいえば「新陳代謝が促進される」ということであり、美容面(肌・髪のハリ・つや等)、健康面(血行改善、冷え性改善、むくみ・肩こり・腰痛改善、病気予防等)、精神面(自律神経・ホルモンバランスの調整)で良い効果が期待できます。
加齢による体調の変化が顕著に現れる50代・60代の我々からすると、こういった効能も十分認識して「代謝を上げる」よう取り組むのが良いように思います。
「そこそこキツイ運動」で地道に「貯筋」することが代謝をあげるベストな方法
最後に、50代・60代が「代謝を上げる」ためのベストな方法についてお話しさせてください。
結論を先に書きますと、おすすめする方法は「習慣的に十分な強度の筋トレを行い筋肉量を増加させること」です。
前段では「茶碗一杯分のごはんと同等のカロリーを消費するには、筋肉を8kg増やす必要がある!」と書いたため、「ごはん1膳のために、筋肉を8kgも増やす意味があるのか」「筋肉量を8kgも増やすなど、とても無理」と思われた方も多いかと思いますが、筋肉量3〜5kg程度でしたら、50代・60代であっても、十分に実現できる話です。
例えば、前述のモデル1の男性(年齢60歳、身長170cm、体重65kg、体脂肪率20%)が体重を維持しながら、筋肉量を4kg増やした場合(=同時に体脂肪を4kg減らす)、体脂肪率は14%弱です。ちょうど「腹筋がうっすら割れてみえる」くらいの引き締まり具合です。モデル2の女性(年齢60歳、身長155cm、体重50kg、体脂肪率30%)だと体脂肪率は22%と「腰のくびれ」が目立つくらいになります。このくらいであれば、是非、目指していただきたいレベルです。
同じモデルで体重を維持しながら筋肉量を8kgに増やしたら、体脂肪率は8%を切ります。これはマラソンランナー並みなので、なかなか一般人では到達できないレベルになりますが…。体脂肪が男性12%〜14%、女性で20%〜25%であれば「健康で若々しい体型」くらいでちょうど良いと思われます。
また、筋肉量が増える(=基礎代謝が増える)ことにより、運動時の消費カロリーも増えます。
国立スポーツ科学センターの計算式を用いると基礎代謝の増分は、
28.5×増加した筋肉量(4kg)=114kcal/日 となり、
TDEEの「激しい運動をする」場合の消費カロリーの計算式(消費カロリー=基礎代謝×1.725)を適用すると、消費カロリーの増分(注:基礎代謝の増分を含む)は、
114kcal/日×1.725 = 196.7kcal/日 となります。おにぎり1つ分くらいですね。
ケーキや甘い菓子パンが400kcal程度と想定すると、「3日に1回、甘いものを食べたくらいでは太らない身体」ということになります。
400kcalをウォーキング等で消費しようとすると(体重や歩くスピードにもよりますが)1時間半〜2時間程度歩かなければなりませんね
代謝を上げることに付随する、健康面のメリットも加味すると、是非「習慣的に筋トレを行い、筋肉量を増やすことで代謝を上げる」方法で代謝アップに取り組んでいただければと思います。
まとめ
長くなってしまいましたので、最後にまとめておきます。一言で「代謝を上げる」と言っても、一朝一夕にはいかないものですが、是非、筋トレで代謝アップにチャレンジしていただきたいと思います。
それでは、本日はこの辺で失礼します。最後までお読みいただきありがとうございました。
- 代謝の分類の一つに「基礎代謝」と「活動代謝」がある。どちらの代謝が上がってもカロリー消費は増える。
- 基礎代謝を上げるには筋肉を増やすこと。活動代謝を上げるには運動量を増やすことが必要。
- 巷のダイエット本の方法で代謝が「上がる」程度を想定してみると、せいぜい20kcal〜100kcal/回程度。この程度では、ダイエット効果は小さく、「激痩せ!」「みるみる痩せる!」とはならない。
- 50代・60代にとって代謝を上げるメリットは大きい。地道な努力は必要だが、習慣的な筋トレで代謝アップに取り組むことをおすすめ。