はじめに
AROUND60 FITNESS(ロクマルフィット)をご覧いただきありがとうございます! 筋トレ歴10年の副業ライターあんじょうです。近年の筋トレブームで「ウォーキングよりも筋トレの方が痩せる」という話をよく聞くようになりました。しかし一方でWebサイト上の記事(例えば某「質問箱」など)やSNS上では筋トレしているのに痩せない…といった書き込みもよく見かけます。
一体どちらが本当なのでしょう。
一般には「筋肉がつくと基礎代謝が上がり、その結果太りにくくなる」と言われていますが、具体的に筋肉が何kgついたら、どの程度基礎代謝が上がるのか、そもそも、そんなに筋肉が簡単につくのかと疑問に感じる方も多いでしょう。
女性の場合は筋肉がつくのを嫌がる方も多いですしね。
この記事では、以下の3点について順を追って順を追って説明していきたいと思います。本日もよろしくお願いいたします。
- 「筋トレで痩せる」と言われる理由
- 50代・60代が筋トレ「だけ」でダイエットすることの難しさ
- 基本かつ王道のおすすめダイエット
「筋トレで痩せる」と言われる理由
「筋トレで痩せる」という記事の背景には以下の根拠データがあるようです。以下、簡単にご紹介します。
理由1:筋肉は脂肪よりエネルギー代謝が大きい
体内の細胞は日々新陳代謝を繰り返しており、それにはエネルギーを必要とします。つまり体を維持するために必要とするエネルギーが脂肪より筋肉の方が大きいのです。
具体的なエネルギー代謝は脂肪1kgあたりが3.5kcal /日、筋肉1kgあたりが13kcal /日です。仮に体重60kgの人で体脂肪が22%のAさんと、同じく体重が60kgなのに体脂肪率が12%のBさんがいるとすれば(註:体重が同じで体脂肪率が違うことの差分は筋肉だと仮定します)、
- AさんとBさんの筋肉量の差 = 60kg×(22%−12%)=6kg
- AさんとBさんのエネルギー代謝の差 = 6kg×(13kcal−3.5kcal)=57kcal …となります。
つまり筋肉量に6kgの差があれば、何もしなくとも(生きて呼吸しているだけで)BさんはAさんよりも約60kcal /日だけ多くカロリーを使っているということですね。
約60kcal /日 ですか・・。これって多いのですか?少ないのですか?
そうですね。この後もう少し掘り下げて考えてみますね。
理由2:除脂肪体重が1kg増えると基礎代謝は筋肉の代謝以上に上昇する
先ほどは脂肪と筋肉の代謝の差に着目しましたが、これ以外にも筋トレを行うことで代謝が向上する要素が実験で明らかになっています。
筋トレを行うことで筋肉量の増加が期待できますが、これ以外にも交感神経を刺激しホルモンの働きを活性化して全身のエネルギー代謝を促進する効果があるとされています。実験では3ヶ月筋トレを行なったグループは、何もしなかったグループと比べ除脂肪体重※1kg増あたり基礎代謝が50kcal /日アップしたということです。(※除脂肪体重:体重から体脂肪の重量を差し引いたもの)
先ほどの筋肉が増えることによる代謝のアップでは筋肉1kgあたり13kcal /日でしたから、筋肉増加よりも神経やホルモンによる代謝増の効果の方が大きいということですね。
1日あたり数十kcal代謝が増えることの意味
筋トレを行うことにより筋肉量が増えたり神経系やホルモン分泌が活性化されることにより、除脂肪体重1kgあたり数十kcal /日程度代謝が増えるとしましょう。
仮に先ほどのAさん、Bさんの例のように筋肉量に6kgほどの違いがあるとすれば、
除脂肪体重6kgの差×50kcal /日=300kcal /日
となり、AさんとBさんの代謝の差は300kcal /日もあることになります。
300kcalといえば、ちょっとしたスイーツなどのカロリーです。
AさんとBさん、毎日同じお菓子を食べてもBさんはAさんより太りにくい、ということになりますね。
また、月単位で見てみると、
6kg×50kcal×30日=9,000kcal/月
となります。体脂肪1kg減らすには9,000kcal必要と言われています。筋肉量が6kg違えば、何もしなくとも月あたり体脂肪1kgに相当するカロリーを多く消費することになる、ということです。これはバカにできませんね。
「太りにくくなる」ことと「痩せる」ことの違い
ここまでで「筋肉量(除脂肪体重)が増えると代謝が上がり太りにくい体になる」ことを説明しました。
では「筋トレをすれば痩せられる」のでしょうか。これは「そう」だとも言えますし「そうでもない」とも言えます。以下「そうでもない」と言う理由を説明します。
理由1:筋肉(除脂肪体重)を1kg増やすのは結構時間がかかる
筋トレを行うことで1ヶ月あたりでどの程度筋肉量が増えるのかは相当個人差がありますが、良い条件を前提にした場合でも1kg/月程度が上限と言われています。この「良い条件」とは「年齢:青年層、性別:男性、経験:筋トレ未経験+適切な指導を受けられる場合」といったことです。女性はホルモンの関係で筋肉が増加しにくいため、上限はこの1/2程度と言われています。
先ほどの例のように「筋肉量を6kg増やす」のは若々しい男性であっても半年程度みっちり筋トレすることが必要で、女性なら1年必要となります。
ましてや、代謝の落ちている50代・60代のアラ還世代ですと、さらに時間が必要…となるわけです。
決して不可能な話ではないのですが例えば「夏までの残り数ヶ月で体脂肪をXX%落として・・」と考えている方でしたら、このスピード感は受け入れ難いものがあるように思います。
理由2:筋肉を増やすためには、まず太らなければならない。
人間の身体の仕組み上、細胞が大きくなるのはカロリーの収支が「消費カロリー<摂取カロリー」になった場合です。これは脂肪細胞でも筋繊維(細胞)でも同じです。つまり、「筋肉を増やしながら同時に脂肪を減らす」ことは身体の仕組み上できないのです。
ですので、筋肉を増やし脂肪を減らそうとすると、「脂肪を極力増やさないようにしながら筋肉を増やす」ことと「筋肉を極力減らさないようにしながら脂肪を減らす」ことを繰り返すことで「筋肉が増えて脂肪が減った」状態にするしかありません。
ボディビルダーなどは増量期と減量期を分けて、「脂肪がついても良いからたくさん食べて筋肉を増やす」期間と「極力筋肉を落とさないようにしながら脂肪を減らす」期間を設けている方も多いのですが、一般の人はあまり極端なことはできないでしょう。
一度に体重が6kgも変化したら、たとえそれが筋肉量の増加によるものであっても服のサイズが変わってしまいます。それもちょっと困りますよね…。
また、50代・60代になると極端なカロリー摂取・体重増は健康面にも影響を与えやすいことにも留意が必要です。ボディメイクのために消化器官や循環器に悪い影響が出ては元も子もありません。
結論:50代・60代が筋トレ「だけ」で痩せるのは難しい
ここまで説明してきたとおり、「筋トレをすれば痩せられる」は「嘘」ではないのですが、年齢を考慮した場合の身体の負担や、効果が出るまでの期間を考慮すると、「筋トレだけで痩せる」のは無理ではないものの、難しいという結論になるかと思います。
ただ、これはあくまでも「筋トレだけで」を条件にした話です。次の章から現実的かつ「王道」の方法についてご説明します。
痩せる(体脂肪を減らす)ための現実的な方法は?
結論から先に書きます。当たり前すぎる話ですが、痩せるための現実的な方法は「筋トレと食事管理を併用する」方法です。
「食事を制限することが難しいから痩せられないのだけど?」…という声が聞こえてきそうですが、少しだけ辛抱していただき読み進めていただきたいと思います。本日の記事では食事管理に関する具体的な方法については割愛し、なぜそれが現実的かという話をさせていただきたいと思います。
カロリーを抑える効果の比較
繰り返しになりますが、痩せるためには身体を「消費カロリー>摂取カロリー」の状態にする必要があります。
そのための方法として一般的なことは「食事を制限する」ことと「運動する」ことです。本日はこれに加え「筋肉を増やす(代謝を上げる)」話をさせていただきました。
体脂肪1kgを減らすにはカロリー収支が約9,000kcalマイナスになる必要があります。仮に1ヶ月かけて体重を(体脂肪で)1kg減らそうとすると1ヶ月を四週間とすると
9,000kcal /4週間=2,250kcal /週 (=321kcal /日)のマイナスが必要です。
これを実現するために、どのようなことをしなければならないか「運動(筋トレあるいは有酸素運動)」「代謝向上」「食事制限」の3種類を比較してみましょう。(体重60kgの方をベースに計算しています)。
2,250kcal /週 減らすには | |
筋トレ(週3回実施と想定) | ・自重トレーニングなら約3時間/回(強度3.5METS) ・ハードなウェイトトレーニングなら約2時間/回(強度:6METS) |
有酸素運動(毎日と想定) | ・ウォーキング約60分/日 ・ジョギング45分/日 |
代謝向上 | 除脂肪体重を6.5kg増加 |
食事制限 | 毎日320kcal分食事制限を実施(320kcal=ショートケーキ1個、唐揚げ3個、ロースカツ80g、某カフェチェーンのXXフラペチーノ1杯…など) |
いかがでしょうか。筋トレは運動としての消費カロリーはそれほど大きくないため、筋トレだけでカロリー消費しようとすると毎回何時間もやらなくてはなりません。直接的なカロリー消費であれば有酸素運動が有効ですが、それでも毎日1時間近く行う必要があり、それを土日平日・雨晴れ関係なく実施する必要があります。代謝向上については50代・60代で除脂肪体重を増やすにはそれなりの時間が必要であることは先ほど申し上げたとおりです。
…そうすると、やはり、食事管理で甘いものを控えたり、揚げ物を控えるほうが手っ取り早い、という話になります。
食事制限だけでカロリー収支を抑えることは生活習慣や嗜好の点から大変という話もあると思いますが、筋トレや有酸素運動も組み合わせながら「主役は食事管理(制限)」と考えていただくのが、現実的かつ「王道」の方法だと思われます。
では、ダイエットに筋トレは不要か?
では、ダイエットには食事管理(制限)が避けられない、ということであれば筋トレは不要か?と言うとそうではありません。
「消費カロリー>摂取カロリー」の状態になると、身体はエネルギーを消費を抑えるために生命維持に必須でないものから削っていきます。この際、筋トレをしていないと脂肪だけでなく筋肉も「あまり使わないから」ということで削られてしまうのです。
ここまで「筋肉を増やすことで代謝が向上する」といったことをお伝えしてきましたが、その逆で筋肉が削られると身体全体の代謝が落ち「痩せにくい身体」になってしまいます。
このような事態を避けるために、筋トレを行い筋肉に負荷を与えることで身体に「この負荷に耐えないといけないから、筋肉は減らせない」と思わせる必要があるのです。
つまり、ダイエット期間中の筋トレはカロリー消費のために行うというより、「筋肉を維持し、代謝の高い状態を保つ」ために行うために必須だ、ということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「筋トレで痩せる」と一般に言われる理由を紐解きつつ、体脂肪を減らす方法として筋トレを採用することの難しさについて解説してきました。
ダイエットに筋トレは必須ですが、それは体脂肪を減らすためではなく、筋肉量を維持し体型と代謝を維持するためのものであるとご理解いただけたでしょうか。
50代・60代のアラ還世代にとっても適切な運動と食事・休息を習慣化すれば筋肉をつけることは難しくありません。しかし、20代・30代の頃のようにいかないことも事実です。
筋肉をつけるにしても、脂肪を減らすにしても、「できること、できないこと」をよく知った上で、身体に負担がないように配慮したアクションを取りたいものです。
それでは、本日はこの辺で失礼します。お付き合いいただきありがとうございました。
- 除脂肪体重が1kg増えると50kcal /日代謝が増える。除脂肪体重を増やすと「太りにくい身体」にはなる。
- だが、50代・60代が筋肉を1kg増やすにはそれなりに時間が必要。筋肉量が増えると「太りにくい身体」にはなるが、それだけでダイエットする(痩せる)のは難しい。
- ダイエットする方法としては「食事管理」が現実的かつ王道。避けずに他の方法と組み合わせて。食事管理がダイエットの中心ではあるものの、体型・代謝の維持のために筋トレは必須。